2009/12/01

影万理江の演ずる富小路君子は世紀のはまり役!・・・有吉佐和子原作テレビドラマ~「悪女について」~


昔のテレビドラマが発掘されるように、DVD化されるのは嬉しいことであります。ビデオデッキが普及するまではテレビ番組を録画して観るということは不可能で、自宅でリアルタイムで観るしかないという時代だったのです。

我が家にビデオデッキが導入されたのは1970年代末期だった記憶があるのですが、当時録画した番組はそれほど多くありません。・・・というのも、初期のビデオデッキには予約録画機能がなく(時計内蔵の専用取付式タイマーは別売りだったらしい)、VHSテープ自体も高価・・・連続ドラマを録画する習慣は一般的ではありませんでした。

そんな時代に放映されたテレビドラマで忘れられないのが、1978年4月6日から9月28日の午後10時から放映された有吉佐和子原作の「悪女について」であります。再放送で観た記憶がないので、たった一度しか観ていないドラマなのですが、その後、繰り返し原作を読んだこともあり、非常に深く記憶に残っているのです。

「悪女について」は「週刊朝日」に連載された原作とテレビでのドラマ放映が同時進行という、ある意味、メディアミックスという手法の先駆けでもありました。物語は「虚飾の女王」と呼ばれた”富小路君子”という美貌の女性の謎めいた人生を27人の証言によって暴いていく・・・というミステリー仕立てになっています。

何故、彼女は戦後の混乱の中で事業家として独立し、大成功を収めて巨大な屋敷を持つほどの大富豪となっていくのか・・・そして彼女の死の真相は?出演した役者は、NHKの大河ドラマ以外では考えられないほど、当時の人気俳優から大御所まで網羅した豪華なキャスティングでした。

緒形拳、杉村春子、渡辺美佐子、中村敦夫、沢村貞子、森繁久彌、奈良岡朋子、中山仁、草笛光子、岸田今日子、山田五十鈴、山口崇、江利チエミ、馬淵晴子、谷隼人、あおい輝彦、小林桂樹、北村和夫、司葉子、小松方正、細川俊之、高橋とよ、赤木春恵、中原ひとみ、ジュディ・オング、仲谷昇などなど・・・。

過去を証言者が語るという物語の構成上、回想場面の多いドラマでした。主人公が10代だった時代まで遡るシーンもあったので、出演者らの「若づくり」の怪演が衝撃的だった記憶があります。

証言者によって富小路君子の印象は、無垢な少女のようだったり、性悪の悪女のようだったりするのですが、人は立場や関わり方によって人物や物事の見方が変わるのだということを、有吉佐和子は印象的に描いています。黒澤明の[羅生門」でも、この手法は使われているのですが・・・「悪女について」は登場人物も多くてかなり複雑になっています。

テレビドラマで、富小路君子役を見事に演じた「影万理江」という女優さんの存在感とインパクトに、ティーンエイジャーだった僕は釘付けになりました。彼女は、劇団四季所属で主に舞台を中心に活躍していた役者さんで、浅利慶太の二番目の奥さまだった方だそうなのですが、放映当時は彼女の経歴については知りませんでした。

このドラマを制作時、影万理江さんは40代であったはずなのですが、10代のおさげ姿の少女時代も演じています。極端な若づくりということもあって、妙な雰囲気を漂わせていました。また、成功して大富豪となっていくとともに、魔性の女っぽいフリフリのロマンチックなドレスに身を包む姿は、コケティッシュで妖しい魅力を放っていました。

「影万理江」と「富小路君子」は「ヴィヴィアン・リー」と「スカーレット・オハラ」のような運命的な配役と、僕には思えてしまうほどの”はまり役”だったのです。残念ながら、影万理江さんはその後テレビで活躍することもなく、このドラマに出演した数年後(1981年)に脳腫瘍のために亡くなられました。それ故に、テレビでしか影万理江さんを知らない僕にとっては、富小路君子役と重ねって永遠に記憶に残ってしまうのです。

キャストの豪華さと当時の有名女流作家のメディアミックスという戦略をしても、テレビドラマ「悪女について」の視聴率はそれほどふるわなかったそうです。そんな経緯もあってか・・・いまだにDVD化されていない「悪女について」は、僕のもう一度観たいテレビドラマのナンバーワンとして長年君臨しているのです!

註:影万里江さんの画像は1967年5月公演「ひばり」のパンフレットからです。



「悪女について」
1978年4月6日~9月28日
木曜日22時より、テレビ朝日系列
スタッフ
原作/有吉佐和子、脚本/大藪郁子、演出/大村哲生、藤原英一、オープニング画像/クリムト「接吻」
キャスト
影万里江(富小路公子)、山口崇(早川松夫)、江利チエミ(丸井牧子)、馬淵晴子(浅井雪子)、緒形拳(渡瀬義雄)、杉村春子(渡瀬小静)、渡辺美佐子(里内文子)、中村 敦夫(大内三郎)、沢村貞子(沢山夫和枝)、森繁久彌(沢山栄次)、奈良岡朋子(林梨江)、有島一郎(伊藤一郎)、木暮実千代(富本宮子)、一の宮あつ子(菅原ふみ)、中山仁(富本寛一)、草笛光子(烏丸瑶子)、岸田今日子(小川圭子)、山田五十鈴(瀬川のぶ代)、小林桂樹(吉井治平)、北村和夫(北村医師)、司葉子(清水かおる)、曽我迺家鶴蝶(鈴木タネ)、小松方正(太田プロデューサー)、谷隼人(小島誠)、あおい輝彦(鈴木義彦)、細川俊之(尾藤輝彦)、高橋とよ(芦屋婦長)、中島久之(鈴木義輝)、牟田悌三、辻萬長、井上和行、花沢徳衛(渡瀬の父)、山本道子、岩井友見(渡瀬の妻芳子)、赤木春恵、南風洋子、三好美智子、山本圭、宝生あやこ、中原ひとみ(昭子)、ジュディ・オング、仲谷昇、山形勲(瀬川大介)、池田秀一(渡瀬義次)、松山省二[松山政路]、梶三和子、浜田寸躬子、原知佐子、葦原邦子、中田喜子(義彦の妻)、松村彦次郎、松岡みどり、佐野周二(輝彦の父)、市川翠扇(輝彦の母)、溝口泰男(本人役)、川久保潔(ナレーター)





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14 件のコメント:

  1. 私も一番好きな小説で一番見たいドラマです。テレビ朝日に投稿しようかまじめに悩んでるところです。
    ケーブルでもやらないかなぁ・・・

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  2. あのドラマ・・
    何がどうと言う記憶はないのですが。
    大人になって、あれってなんだったんだろうって。

    小説を読んで、そうそう、そうだったって。

    あの頃、「影万里江謎の死」と混同するくらいで。
    もう一度、見たいドラマのひとつです。

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  3. 私もハマりました。本当に素晴らしいキャスティングで、ぐいぐい引き込まれたドラマでした。
    今回沢尻エリカさんでリメイクされるようですね。
    今なら誰が演じられるか・・・?と時々思っていましたが、「あ~そうきたか」という感じ。
    ただ、前作の出演者が豪華すぎたので、どうなんだろう?という気持ちもありつつの・・・
    でも、楽しみにしています。
    比べちゃうだろうなぁ。やっぱり。

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  4. 当時母と二人でドラマの虜になり毎回楽しみに見ました。原作の面白さ、はまり役というべき影万里江さんの素晴らしさ、鮮明に記憶に残っていて、もう一度見たいと時々懐かしく思い出していたくらいです。影万里江さんと富小路公子がわたしの中で見事に一体化していました。影万里江さんの訃報に接した時はとても残念でした。母は存命ですが、覚えているかどうか聞いてみる状況にはありません。あの影さんの「悪女について」をもう一度見たいです。

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  5. 私も毎回、楽しみにして見ました。
    また、ドラマ化して欲しい・・・というよりは
    影まりえさんがとても良かったので、当時のものを見てみたいですね。
    DVD化はされないんでしょうか・・・残念ですね。
    是非、また見たいものです。
    影まりえさんは、特に声が好きでした。
    華やかで透明感があって魅力的でした。
    若くしてなくなられたんですね・・・。

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  6. いやーあのドラマを覚えている人がたくさんいるのですね。さすが目の付け所が違うな。私も今回テレビ欄を見て”悪女について”ってあの昔やってたやつ?と思わず見てしまいましたが、その1978年の影万里江さん主演のドラマには全くかなわないですよね。母が誘ってくれたのか定かでありませんが、当時中学生だった私も毎週楽しみに観ていました。あれほど記憶に残ったドラマもないかも。そうか、その影さんって、亡くなったんですか。なんだかドラマそのものみたいでぞーとしました。

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  7. 私も当時、このドラマ全体、影万里江さんに、すっかり魅了されていました。他の方のコメントでも、再放送されていないとありますので、全話は一度しか放映されなかったということですよね。それなのに、公子の台詞のいくつかのフレーズを覚えてしまったのは、それだけ集中して見入っていたからだと思います。原作はTV放送終了後1~2年経って読んだので、その時は、確かに活字ではなく、影さんの旋律のように奏でられるあの声に魅せられて脳裏から離れなくなったフレーズができたに違いない。。登場人物はおろか、視聴者までも魔術をかけられてしまう、あの囁くような、それでていてきっぱりとした、話法、たたずまい。もう一度(何度も)観たいです。私もずっとDVD化を熱望し続けてきました。皆で嘆願しましょう。

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  8. 私も「影万里江=富小路君子」派の一人です。
    「悪女について」は今まで唯一といって良いほど「一週間が待ち遠しい思い」で見たTVドラマでした。ドラマ終了後、あまりに熱狂ファンになったため劇団四季の「幸福の青い鳥」まで見に行き、そこで「雪の女王」役の影万里江さんと握手してもらったのが最大の幸運でした。なので翌年亡くなった時には何だか現実のものとも思われない虚脱感を味わったことを憶えています。「悪女について」はぜひぜひDVD化してもらいたいものです。私にとって彼女は「幻の名女優」なのですから。

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  9. 毎回冒頭でカメラに向かってお茶を出したりするシーンと、ラストのドレスを着た主人公の女性が転落していくシーンが印象的で忘れられませんでした。このブログを見つけて当時私が13歳だったことを知りました。原作者も何も解らないいまま探し続け、22〜23歳の頃に華岡青洲の妻を読んだのをきっかけに有吉佐和子にはまり、何冊目かで悪女についてにたどり着き『あのドラマだ!!』と感激したのを覚えています。主演の女優さんの印象が強かったのに、その後見かけなかったのわ亡くなっていたからなんですね…是非DVD化してもらいたいです。

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  10. このドラマがどうしても観たくて探しました、が残念なことにDVD化されていないようです。
    小説をドラマにすると大抵はがっかりする内容なのですが、このドラマだけはまさに主演の影万理江さんが君子そのもので、また共演者もすばらしい顔ぶれで、毎回ドキドキしながら楽しみに観ていたのが忘れられません。
    あの名作をどうしてDVD化していないのか理解できないんです。
    は~、どうしてももう一度ゆっくり観てみたい!

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  11. うわぁ見た~い!
    小説があまり面白かったので、いろいろネットで調べておて、ここに辿りつきました。

    沢尻さんでは…ねぇ。

    どちらも見ていないので、何とも言えませんが(^^♪
    DVD出てほしいですね。ぜひ見てみたいです。

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  12. 数年おきに思い出してます。また見たいです。あれだけのスペシャル感を醸し出してたのにDVD化されたないなんて、何かのフォースが働いてるとしか思えません。同じ気持ちの方が結構いらっしゃることが分かったのは嬉しいです。blog有難うございます♪

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  13. PCで何でも検索できる時代になったのでもしや・・・!?と思って探してみて、ようやくここに出会いました、感激です。
    影万里江さんというお名前でしたね、彼女。
    あの1作だけでテレビから消えてしまわれたので、ず~っと心に残っていました。
    印象的な作品だったので、DVD化されていないかと期待しましたが、ないのですか・・・残念。

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  14. 友人と昔のテレビの話になると必ずもう一度見たい!と話題になります。その時すでに大物だった方がおさげの扮装だったとか青年の学生姿だったとか・・・?と思いつつ真面目にすんごく楽しみにして見ていました。ゴディヴァのチョコレートを知ったのはこのドラマでした。結婚式の引き出物にしたのもその影響かも・・・どの局で放送していたかわからなかったので15年程昔に片っ端からテレビ局に電話をしたことがあります。テレビ朝日だと言うことがわかり再放送をお願いしましたら権利関係が複雑なので無理だと言われてがっかりした覚えがあります。

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