2010/03/02

それが男の生きる道!・・・それでも”麻薬”のような戦場へ戻る選択〜「ハート・ロッカー」〜


今年のアカデミー賞作品賞や監督賞の最有力候補と言われている「ハート・ロッカー」をアメリカ版のブルーレイで観ました。
配給会社の倒産により、日本でのロードショーが遅れていたようですが、3月6日から公開されるようです。
タイトルの「ハート・ロッカー(The Hurt Locker)」を「HEART ROCKER」と勘違いすると「心のロッカー」というようなロックミュージシャンの映画みたいですが・・・原題は軍事用語で「爆死者を入れるモノ」という意味らしいです。
僕は「傷つき(hurt)をしまう者(locker)」というような意味も感じました。

イラクでのアメリカ軍の爆発物処理班の38日間の厳しい任務を描いている”戦争映画”で、アメリカ軍のイラクにおける現状に対しての「自虐的」な状況を淡々とドキュメンタリータッチで見せていきます。
あからさまに反戦を謳っているわけでもなく・・・といって、戦争を肯定しているわけでもないのですが、根底にはブッシュ政権に対する批判が見え隠れするのです。
「戦争は麻薬のようだ」とつぶやく、爆弾処理だけが取り柄のような一匹狼の主人公・・・グループ内の不信感や対立、仲間や知り合いの少年の死など、ドラマチックな要素もあることはあるのですが、ヒューマンドラマとして涙の感動を訴えるわけでもなく、人間関係をウェットにも描いてもいません。
イラク人の台詞にはサブタイトルもなく、観客のシンパシーを感じさせる機会も与えられず、スナイパーや自爆テロリストとして登場しては次々と死んでいきます。
全編をハンドカメラで撮影しているので、フレームが常に激しく動くので、全編を通して観客は落ち着くことができません。
出演している俳優たちが熱演しているのにも関わらず演じているという印象もなくて、観る者は戦場に実際にいるような緊迫感を常に感じさせるのです。
台詞や物語の展開によって多くを語るのではなく、戦場にるような感覚を感じさせながら、主人公の選択の真意を問う映画と言えるでしょう。
爆発の煙、砂漠の砂、イラクの街並のように、この映画を見ていると戦場の悲惨な状況に対して、乾いた精神になってしまうような気がします。
たいした意味も説明もなく、次々と死んで人たち(レイン・ファインズ演じるベテラン作業員もあっさりと射殺されてしまう)を目の前にしても、自分が何をすべきかの答えは”ひとつ”しかないのです・・・それが男の生きる道、エンディングは、映画の冒頭シーンに戻るループのようです。

監督のキャスリン・ビグローは、元ジェームス・キャメロン監督の奥さんであり、現在58歳とは思えないモデルのような美貌の持ち主です。
しかし以前から、”美人女性監督”に期待されそうな「女性の視点」をもったタイプの映画をつくる監督ではありません。
もしも、アカデミー監督賞を彼女が受賞したとしたら、女性として「初の監督賞受賞」ということになるらしいのですが、わざわざ「女性監督」と分けること自体、失礼なように思えてしまう「監督」なのです。



「ハート・ロッカー」
原題/The Hurt Locker
2009年/アメリカ
監督 : キャスリン・ビグロー
脚本 : マーク・ポール
出演 : ジェレミー・レナー、アンソニー・マッキー



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