2012/03/07

東映エログロ路線末期のハチャメチャな悪趣味っぷり!・・・牧野雄二監督の幻のオカルトポルノが遂にDVD化~「女獄門帖 引き裂かれた尼僧」~



ブルーレイディスクが普及してきたと思ったら、何故かいろんなメーカーからはDVD化されていなかった作品が続々とDVDで発売されております。どうせならばブレーレイで発売すればいいのに・・・とは思いますが、DVDなら安価で生産できるためか、メーカーは最後にひと儲けというつもりなのかもしれません。

ラピュタ阿佐ヶ谷などで特集上映はされてきたものの、なかなか観れる機会のなかった牧口雄二監督のカルト作品が、遂に先日(2012年2月21日)DVD化されました。

牧口雄二監督は、石井輝男監督の異常性愛路線の流れを汲む「エロ」「グロ」「ポルノ」の”添え物映画”を任されていた職人監督。ただ、監督としてデビューした時期が、とっくに東映全盛期を過ぎてからということもあってか、低予算でのキワモノ勝負・・・東映の映画館で公開はされている(18禁の成人映画)とはいっても、群を抜いた悪趣味の作品ばかりという、特異な”作家性”が、飛び抜けています。

遊女に性技を仕込む”玉割り人”のゆきの悲恋と女の業をしっとりと描いたデビュー作の「玉割り人ゆき」(1975年)とその続編「玉割り人ゆき 西の廊夕月楼」(1976年)や、和製「俺たちに明日はない」的な青春ドラマ「毒婦お伝と首斬り浅」(1977年)などは、当時から評価が高かったようですが・・・カルト作品として今日語れることが多いのは、愚作と評されていた「戦後猟奇犯罪史」「徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑」「女獄門帖 引き裂かれた尼僧」であります。

その中でも公開後に30分の短縮版のVHSが発売されたっきり・・・日本カルト映画全集としてシナリオが出版されていたものの、東映チャンネルで放映されることがなく、世界のどこの国でもメディア化されていなかった「女獄門帖 引き裂かれた尼僧」は、滅多のことでは目にすることのできない”幻の作品”として「カルト中のカルト映画」として知る人ぞ知る作品となっていたのでした。

年期が明けたと思っていた女郎の”おみの”(田島はるか)は、弥多八(汐路章)と亀(佐藤蛾次郎)に土蔵に連れ込まれて犯されてしまいます。おみのが鞍替えさせられる品川の女郎屋は地獄のようらしい・・・そこで、客の沢吉(小林稔侍!)の足抜けを手伝わせて、3年経てば現世の縁切りができるという山奥の駆け込み寺「愁月院」を目指して逃げることになるのです。勿論、沢吉は追っ手に捕まり、一人になったおみのは道中、浮浪者の男たちにいたぶられて、犯されまくられます。

ここからネタバレとグロテクスな表現含みます。

なんとか愁月院に辿り着いた”おみの”は、庵主の桂秀尼(折口亜矢)に助けられるのですが・・・この尼寺こそ、足を踏み入れた男を生きては返さない、男を憎む食人レズ尼さんたちの巣窟だったのです!アヘンに陶酔する庵主、派手な化粧の”おかじ”(ひろみ麻耶)と”おつな”(芹田かおり)はレズに耽り、年増の”おとく”(藤ひろ子)は人肉鍋に舌鼓を打つ・・・そして、すべての奇行を淡々を見つめている口を利かない少女の”お小夜”(佐藤美鈴)という女達。そして、白塗りの寺男(志賀勝)は、寺の裏で生け贄となった男の死体をさばいて調理しながら、その人肉を食らう・・・志賀勝は毎度ながらの怪演を見せてくれています。


娘と駆け落ちしてきた若者も、”おみの”を追ってきた浮浪者の男も弥多八と亀も、代官所からの隠密(成瀬正)も、すべての男たちは拷問され殺されていきます。中でも隠密は、首を切り落とされた胴体だけが血だらけでピクピク・・・驚いた”おみの”が水を飲もうとして水桶を中を覗くと生首があるというグロテスクな描写となっています。ただ、こてこてのゴアシーンは、この場面ぐらい・・・全編に渡る気味の悪いナンセンスさが、本作の真骨頂かもしれません。


愁月院の正体を知った”おみの”は・・・”おつな”の猫を惨殺して、”おかじ”に罪をなすりつけ、二人殺し合うように仕向けます。さらに本堂に火を放って”おとく”を殺し、庵主と死闘を繰り広げます。しかし、”お小夜”に植木ハサミで突かれて、”おみの”も殺されてしまうのです。燃えさかる炎を見つめながら、”お小夜”は、庵主(実は”お小夜”の母親だった!)を強姦した男を殺したことを思い返しながら・・・初潮を迎えます。血が足を滴るという何とも悪趣味なロリコンしか喜ばないような演出!最後は、ひとり田舎へ帰る”お小夜”が雪の中を歩く姿で映画は終わるのですが・・・センチメンタルな音楽が、なんとも気色悪いのであります。


エロといっても、エッチなシーンのある女優さんは貧乳ばかり・・・唯一のグラマーなのが年増の”おとく”となのだから「ポルノとして成立しているのか?」という素朴な疑問も感じてしてしまいます。訳がわからないのが、”おとく”の母乳を無理矢理飲まされた亀(佐藤蛾次郎)が死んでしまうところ・・・人肉を食う女の母乳には毒が入っているとでもいうのでしょうか?このあたりは、エロとか、グロより・・・笑うに笑えないギャグという感じ。そう言えば・・・30年ほど前ニューヨークのナイトクラブで、ストリップパフォーマンスを見たことあるのですが、観客に母乳を浴びせかけるというキワモノ芸でした。ボクは母乳から逃れようとして、ギャーギャー叫びまくり、マジ気が狂いそうになったこと思い出しました。


「女獄門帖 引き裂かれた尼僧」というタイトルではありますが、尼僧は最後まで”引き裂かれる”ことはありません。(物理的にも、精神的にも)・・・ただ、当時の男性目線によって妄想された「男を憎むレズの尼さん」という差別的な世界観に貫かれた「東映エログロ路線」末期の、行き着くところまで行ってしまった感のある「超怪作」であることは間違いありません。アルゼンチンの殺人映画「スナッフ」を意識したのが「徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑」であるなら、本作「女獄門帖 引き裂かれた尼僧」はトビー・フパー監督の「悪魔のいけにえ」というところでしょうか?

いずれにしても、観る機会がなかったが故に「幻のカルト映画」となっていた本作は、多くの人が目にすることで、本来の「悪趣味な愚作」という”愛のある悪評”を下されるような気がするのです。

「女獄門帖 引き裂かれた尼僧」
1977年/日本
監督 : 牧口雄二
出演 : 田島はるか、折口亜矢、ひろみ麻耶、芹田かおり、藤ひろ子、佐藤美鈴、成瀬正、小林稔侍、志賀勝、汐路章、佐藤蛾次郎



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