2017/11/30

オールドミスの甘酸っぱい恋物語じゃないサイコな怪作で”ドMの女王さま”っぷりを発揮したジョーン・クロフォード・・・ナット・キング・コールが歌う名曲とは無関係な”おキャンプ映画”なのっ!~「枯葉/Autumn Leaves」~


ジョーン・クロフォードは1920年代半ばから1970年まで(何本かのゲスト出演を除いて)主演作品しかないという・・・まさにスター女優の中のスター女優であります。しかし、30代を過ぎると”年増”扱いされることが当たり前だった昔のハリウッド映画界で、それほどの長期に渡って主役を貼り続けるということは並大抵のことではありません。ジョーン・クロフォードが40代半ばを過ぎた1950年代になると、主演といっても格下の男優が相手役の「B級映画」ばかりが目立つようになり、その迷走っぷりは明らかになっていきます。


1952年に発表されて大ヒットしたナット・キング・コールの歌う「枯葉」を主題歌/テーマミュージックとした1956年制作の「枯葉」は、骨太な映画で知られるロバート・アルドリッチ監督が撮った女性映画のひとつです。全編に渡って「枯葉」が繰り返し繰り返し流されますが、本作は「枯葉」の歌詞とはまったく無関係であります。

本作が撮影された頃というのは、アルドリッチ監督のアメリカ国内での評価が、まだ高くなかった時代・・・一方、ジョーン・クロフォードはハリウッドの大御所として君臨しており、撮影直前になって降板をちらつかせて台詞の書き直しを要求するほどワガママ放題だったそうです。それを、アルドリッチ監督が頑として突っぱねたため、撮影は険悪なムードでスタートしたらしいのですが、あるときアルドリッチ監督がジョーン・クロフォードの演技に涙したことがきっかけで二人は和解・・・6年後”あの”「何がジェーンに起ったか?」で再びジョーン・クロフォードを起用することになります。


在宅でフリーランス(?)のタイピストをするミリー(ジョーン・クロフォード)は、ロサンジェルスに暮らす淋しいオールドミス・・・コンサートのペアチケットをもらっても、誘う相手が家主のおばあさん(ルース・ドネリー)だったします。若い頃、ミリーは父親の介護を優先してしまったことで、結婚を逃してきてしまったのです。


ひとりで行ったコンサートの帰りに偶然立ち寄ったカフェテリアで、年下の男バード(クリフ・ロバートソン)から強引に相席を求められます。最初は冷たくあしらうミリーでしたが、彼の強引さに負けてしまい、戸惑いながらもバートとは次第に打ち解ていくのです。年齢差を理由にミリーはバートの誘いを一度は断るのですが、それでもしつこいバートに根負けしてミリーは海辺のデートを承諾します。


バートの視線を意識するミリーは、水着姿になることを躊躇してしまいますが・・・そんな事はおかまいなしに一人で海へ走って行ってしまうバートは、まるで子供。案の定(!)ミリーは溺れかけて、そのドサクサに紛れてバートは熱烈なキスするのです。


波が打ち付ける浜辺で抱き合いキスする二人は、本作公開の3年前に公開された「地上より永遠に」(1953)の有名なシーンのまんま”パクリ”。あっさりとバートに身を委ねてしまったミリーでしたが・・・デートの最後には年齢差の理由に「もう二度と会わない」と一方的にバートを突き放しまいます。

それから一ヶ月・・・ミリーは再び孤独な毎日を送くりながらも、どこかでバートを忘れられません。そんな、ある日バートがサプライズで訪ねてくるのです。百貨店でマネージャーの仕事についたと語るバート・・・それをお祝いしようと友達のように二人はデートへ出かけます。そつない態度のミリーに煮え切らない思いを募らせたバートは、突然「愛している」と訴えて、プロポーズをするのです。

再び年齢差を理由に断るミリー・・・しかし、自分の心に素直になろうと、ミリーは土壇場でプロポーズを受け入れるのです。そうとなったら「すぐにでも!」ということになり、二人はメキシコまで車を飛ばして(当時はアメリカ国内で手続きをするようりも簡単だったため)結婚をします。


本作の前年に公開されたデヴィット・リーン監督、キャサリーン・ヘップバーン主演の「旅情」のような、オールドミスのヒロインの心が、揺れ動く甘酸っぱいメロドラマだと思っていると・・・二人が結婚するやいなや、本作は妙な方向に展開していくのです。

ここからネタバレを含みます。

結婚後、二人はミリーの住んでいる部屋で一緒に暮らし始めます。毎日仕事帰りにプレゼントを持って帰ってくるようなラブラブの新婚生活なのですが・・・それまでミリーに語っていた出身地や経歴とは違うことを、バートが語り始めます。問いただすと「別な男性と勘違いしている」と、とぼけるのですが・・・バートは本当にそう思っているような態度なのです。


そんなある日、ヴァージニア(ヴェラ・マイルズ)という若い女性が、バートの留守中に訪ねてきます。彼女曰く・・・最近バートとの離婚が成立したので、財産分与の手続きのためにバートにサインが必要だとのこと。この財産というのは、元々バートの母親のもっていた財産らしく、ヴァージニアが分与を受け取るためにはバートの同意が必要となるらしいのです。

離婚した理由は、ある日突然バートが姿をくらましたからと説明するヴァージニア・・・バートに結婚歴があることさえ知らなかった上に、幼い頃に亡くなっていると聞かされていた父親は存命しているし、行方不明になる前には万引きのトラブルも起こしていたと聞かされたミリーは、ことの真相を確かめるため、バケーションでロサンジェルス滞在しているバートの父(ローン・グリーン)を訪ねることにします。父親は息子であるバートを「嘘つきの出来損ない」と見放している様子・・・ミリーはバートを守るのは自分しかいないという思いを強くするのです。


百貨店に立ち寄ったミリーによって、バートはマネージャーではなくネクタイ販売員であることがバレてしまいます。さらに、毎日のプレゼントは給料のツケで買ってきたものだったり、売り場から盗んできたものだったようなのです。ヴァージニアのことを尋ねると「忘れていた」と言い訳をする始末・・・バートは何かしら衝撃的な体験してトラウマになっていることが分かってきます。しかし、過去から逃げているだけでは問題が解決することはないと、ミリーは嫌がるバートを説得して父親に会うことを承諾させるのです。


先にホテルに到着したミリーは、偶然バートの父親とヴァージニアがプールから出てくるところ目撃・・・実は、バートの父はヴァージニアとデキていたのです。部屋に戻る父親らと入れ違いに、バートがホテルに到着・・・エレベーターを乗り過ぎたミリーが父親の部屋の前に到着したときには、既にバートは父親とヴァージニアが一緒にいるところを目撃してしまった後で、呆然と廊下で立ち尽くしています。バートの抱えていたトラウマというのは、新婚6ヶ月の頃、バートが父親とヴァージニアがいちゃついているところに鉢合わせしてしまったことだったのです。


再びトラウマを経験して憔悴したバートを、父親とヴァージニアは容赦なく尋ねてきて、財産分与の書類へのサインを求めます。二人は、バートを精神的に追い詰めて、バートの母親の残した財産までもを奪おうと画策していたのです。「バートを精神病院にぶち込め!」という父親に対して、毅然とした態度で対峙するミリー・・・苦境に追い込まれても戦う”ドMの女王さま”っぷりを発揮したジョーン・クロフォードの真骨頂といえるシーンであります。


しかし、精神的に追い詰められていたバートは、ミリーが父親らとグルになって自分の財産を狙っていると勘違いしてしまうのです。そして、否定するミリーの頬を平手打ちした上に、タイピストにとっては大事な手に重いタイプライターを投げつけてしまいます。


バートは自分がミリーの手や顔を傷つけたことを忘れてしまうこともあるようで、以前のようにラブラブでご機嫌な時があったり、トラウマに退行して泣き叫び出す時があったりと、精神的に不安定になっていきます。バートには精神病院での治療が必要だという専門医からの強い薦めもあり、ミリーは苦渋の決断をするしかありません。たとえ、治療が成功したあかつきには、ミリーへの愛情をバートが失ったとしても・・・。


バートは病院の職員に連行されて精神病院へ入院・・・後悔や不安を感じながらもミリーはタイピストの仕事をこなしていて、かさむ入院費を負担して、孤独な毎日を再び過ごしています。バートは電気ショックや薬の投与による治療により、次第に回復していくのですが、ミリーには手紙一通さえ書くことはありません。それでもバートの退院が決まると、精神病院からはミリーの元へ身元引き受け人として連絡がくるのです。


すでにバートは自分のへの愛を失っているかもしれない・・・それどころか、精神病院に入院させた自分を恨んでいるかもしれない・・・それでもミリーは退院日にバートを尋ねることにします。バートの過去のトラウマと同様に、自分もバートの人生からは離れるべきだと伝えるミリーに対して、出会った頃のように優しい気遣いをみせるバート・・・ミリーはバートの愛を取り戻したことを確認して、二人は抱き合って熱いキスを交わすのです。

ハッピーエンドっていえばハッピーエンドではありますが・・・この先ミリーが幸せな結婚生活をバートと送っていけるのか不安を感じられるにはいられません。なんでもかんでも精神の病気のせいにしてしまう時代ならではの物語であります。

それにしても、出会いから年齢差で悩み、夫のトラウマに苦しめられ、肉体的にも精神的にも苦しめられ、入院費を負担するために必死に働かなければならなず・・・なんとも遠回りの幸せです。年上女が若い男と幸せになるためには、これほどの努力と犠牲が必要だともいうのでしょうか?

ミリーの立場でみると、なんとも悲惨な(?)ハッピーエンドの物語とも思える本作ですが・・・常に気丈に困難を乗り越えていくジョーン・クロフォードに、観客が同情を感じることはありません。あまりもの打たれ強さに、観客は「もっと苦しめ~!」とサディスティックな気持ちになってしまうのです。

ジョーン・クロフォードとクリフ・ロバートソンが過剰なほどの熱演している本作が”おキャンプ映画”として語られる”もうひとつの理由”は・・・当時50歳を前にしたジョーン・クロフォードが、30代前半のクリフ・ロバートソン相手に”年上の女性”を演じているにも関わらず、少しでも”若く”スクリーンに写りたいという執念を感じさせるからかもしれません。本作にはアリエナイ場所にアリエナイ影がたびたび出現するのです。


下あごの”たるみ”は光の加減次第では、非常に年齢を感じさせてします。そこで本作では、ジョーン・クロフォードのアゴから首の周辺に、何の影だか分からない謎の影が作られているのです。女優ライトで顔正面にはたっぷりと光が当てられていますので、顔上半分は浮き出るように白く写り、アゴの下はまっ黒く写り、下あごは見えなくなってしまうというわけであります。

このような不思議な影が出現するシーンは全編に渡っており、撮影現場での照明や美術のスタッフらの苦労が垣間みれるのと同時に・・・完璧に影をつくりだす立ち位置と絶妙な顔の角度を、完全に把握しながら演技するジョーン・クロフォードに、真の”女優魂”を感じさせられずにはいられないのです。

「枯葉」
原題/Autumn Leaves
1956年/アメリカ
監督 : ロバート・アルドリッチ
出演 : ジョーン・クロフォード、クリフ・ロバートソン、ヴェラ・マイルズ、ローン・グリーン、ルース・ドネリー
日本劇場未公開、WOWOWにて放映



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